５００円玉の思い出。

皆さんは５００円玉で何を買いますか？

５００円・・・人によってその価値は大きくわかれると思います。
５００円を手にして多いと喜ぶ人と、少ないと嘆く人。
今日はそんな思い出を・・・。









私の実家は飲食店です。
下町の小さな食堂ですが、
開店AM5:45のうちのお店は
朝の早い労働者のお客さんで大忙しでした。



中学生の頃からお店を手伝うようになり、
中学時代は春、夏、冬の長期休暇の間だけ
高校、専門学校時代は毎朝、
学校行く前にビッチリお店のお手伝いでした。
当然、朝５：３０までに起こされてお店に出てからの登校なので
デザインと体育と音楽以外の授業なんて
おやすみなさ〜いの時間でしかなかったです。

朝定食は当時４３０円。
どんぶりメシに、おみそ汁、小皿もの（生たまごやシラスおろしetc）と
メインのおかず、サンマだったり、アジだったり。
天ぷらにおさしみ付きの日もありました。
このボリュームでこの値段ですから、朝はてんてこまいの忙しさでした。

場所が場所ですので、おうちを持たない方などがたくさんおります。
旅館を定宿にしている方などは良いのですが、
たま〜に屋根の無い所で生活しているんだな〜っていうのが
一目でわかるお客さんがいらしていたのです。
兄はこのお客さんには来て欲しくないようで
そうですよね〜飲食商売なのでにおいなども気になってしまうのも確かです。

しばらくたって、また同じお客さんがいらしたのです。
兄はおれはイヤだから、お前が運んでこい！！と
お客さんに向かって
今日はしょうがないけど、他のお客さんに迷惑だからもう来るなと。
でも、私はそのお客さんがお店に入る前に、自分の洋服のよごれを落とし
椅子もよごれがつかないようにか、浅く、浅く座っていたのを見ておりました。
しかも、朝１番でお店にお客さんがまばらな時間に。
なんだか悲しくて、
申し訳ない思いで食事を運び前金せいなのでお金を頂きました。
机におかれたのは５００円玉。
大切そうにズボンのぽっけから出して私に言いました。
「ダンボール運んで生活してるんだ。１か月に１度だけ自分へのご褒美に
　この店来てたんだよ〜。悪かったね、おねいちゃんにもやな思いさせて。
　もうこね〜からよ〜、かんべんな。」
「いいえ、ごめんなさい。。。」としか言えなかった私。
おつりを渡して・・
なぜだか涙があふれてしまってしばらく裏に隠れていました。
そんな気持ちでうちに食事に来てくれていた事がうれしくて
でも追い返すような事をしてしまっていて。。。

兄にお客さんの話をしたら「そっか〜、でもしょうがないだろ〜商売だから」
確かに、うちのようなお店では相席があたりまえ。
カウンターでもきちんと詰めて頂かないと仕事にならないのは事実。
あまりにきたないお客さんのまわりには他のお客さんが座ってくれないのです。
ベロベロに酔ったお客さんも他の方に迷惑だからと良くお断りしていました。

実家のある場所は出稼ぎの労働者の方のたくさん集まる場所。
そのまま居着いてしまう方も少なくありません。
働いて、飲んで、お金がつきるまで飲んで。。。
娘さんらしき方がお父様を探しに青森のほうから来た事もありました。
大きく引き延ばした写真片手に。

５００円玉であなたなら何を買いますか？
その５００円玉はあなたにとってどれくらいの価値ですか？